国際オリンピック委員会(IOC)が、eスポーツを担当する専門委員会の活動を休止したことが2025年5月3日までに明らかになった。共同通信などが報じており、バッハ前会長体制のもとで推進されてきたeスポーツの五輪採用に向けた取り組みが、大きな転換点を迎えた形だ。
バッハ前会長時代に独自大会も創設——その後の方針転換
IOCはバッハ前会長のリーダーシップのもと、「オリンピックeスポーツシリーズ」と銘打った独自大会を立ち上げるなど、eスポーツを五輪競技として取り込む可能性を積極的に模索してきた。若年層への訴求力の高さが主な理由とされており、関係者の間でも期待感が高まっていたようだ。
しかし、今年就任したコベントリー新会長は従来の競技スポーツを重視する立場を取っており、今回の専門委員会休止はその方針転換を象徴するものとみられている。バッハ時代のeスポーツ推進路線が実質的に棚上げされた格好だ。
「ゲームのルールはメーカーが握っている」——構造的な課題
そもそもeスポーツの五輪採用をめぐっては、以前から根本的な課題が指摘されてきた。通常のスポーツと異なり、ビデオゲームのルールや仕様は特定の民間企業(ゲームメーカー)が管理・変更できる。バランス調整やアップデートによって競技性が一夜にして変わりうるという性質は、オリンピックのような国際的な標準化を求められる場には馴染みにくいという見方は根強い。
また、チートや不正行為の防止、知的財産権の取り扱いなど、既存のスポーツにはない複雑な問題も絡んでくる。「eスポーツはスポーツではない」という異論が消えないまま議論が続いてきた背景には、こうした構造的な難しさがあると言えるだろう。
サウジアラビアの動向も影響か——変化する国際情勢
一部では、eスポーツの五輪採用を後押ししてきた勢力としてサウジアラビア系の資本が挙げられていた。自国をeスポーツの国際的な拠点として売り出すべく、IOCへの積極的な働きかけがあったとされる。しかし、ESL・FAZEなどへの直接投資や独自大会「Esports World Cup」の開催によって自前のeスポーツ基盤を構築した結果、IOCを経由する必要性が薄れたとの見方もある。
いずれにせよ、eスポーツの五輪採用を支えてきた複数の追い風が、同時に弱まりつつあるタイミングでの委員会休止となった。
eスポーツ業界への影響は?——大会・選手・学校現場
今回の決定はIOCレベルでの話であり、既存のeスポーツ大会やプロリーグが直ちに影響を受けるわけではない。League of LegendsやVALORANT、ストリートファイターなどの大会は引き続き世界各地で開催されており、プロ選手たちの活躍の場が失われたわけではない。公式中継も各タイトルのパブリッシャーやプラットフォームを通じて継続されている。
ただ、「オリンピック」というブランドを将来のゴールとして据えてきた国内外のeスポーツ推進団体や、eスポーツ部を設立した学校・教育機関にとっては、方向性を再考するきっかけになるかもしれない。
「スポーツ」か「競技」か——定義をめぐる議論は続く
「eスポーツはスポーツか否か」という問い自体は、今回の件で決着がついたわけではない。モータースポーツや射撃競技のように、身体的運動量が比較的少ないながらも五輪競技として認められているジャンルがある中で、eスポーツだけを明確に線引きする根拠は何か——議論は今後も続くとみられる。
IOCの委員会休止はひとつの節目ではあるが、eスポーツが独立した競技・エンターテインメントとして世界的な規模で成長していることは揺るぎない事実だ。五輪の外でどのように権威と価値を確立していくかが、業界の次なる課題になるだろう。
(出典: 一次ソース: 共同通信・Yahoo!ニュース)

