2024年に「ポリコレ押し付け」として大炎上したゲーム開発コンサル企業が、Gamescom 2026の壇上に戻ってきた。騒動が再燃するのは必然だった——ただし、今回の炎上には「情報の信頼性」という大きな前提が絡みついている。
Sweet Baby Inc.とは何者か——2024年炎上の文脈

Sweet Baby Inc.(SBI)は、DEI(多様性・公平性・包摂)の観点からゲームのストーリーや登場人物構成にコンサルティングを行う企業だ。共同創設者のKim Belair氏がその代表的な顔として知られている。2024年、SBIは「ゲームへのポリコレ介入」として一部ゲーマー層から強烈な批判を受け、業界内でも賛否が大きく割れた。その後も存在感を保ち続け、Gamescom 2025にもBelair氏は招待されていたという。
Gamescom 2026での講演——FF7が「スライド素材」として登場

2026年8月26日〜30日にドイツで開催されたGamescom 2026にて、Belair氏が「私たちは死んでいく:冷淡な業界の中でアートを作ること(We Are All Dying: Making Art in an Indifferent Industry)」と題した講演を行った。独立系スタジオMistik Studiosがこの講演のスライド写真をBlueskyにシェアしたことが発端で、SNSに広まった。
拡散した内容によれば、スライドには「あなたが思い描くチーム」として多様な人物が並ぶ一方、「実際のチーム」として年配の白人男性が並ぶ対比図が示されたほか、ゲーム業界の保守的な企業体質を批判する「ban this sick filth(こんなひどいものは禁止しろ)」という言葉も登場したとされる。そして、スクウェア・エニックスの『ファイナルファンタジーVII』のキャラクター構成が多様性の題材として引用されたと報じられている。
中国のゲームメディア「游民星空」は、Mistik Studiosが共有したスライド画像をもとに、Belair氏がゲーム業界の多様性不足を批判したと報じている。
「盛られている」可能性——発言内容をめぐる検証の動き

ここで立ち止まって考える必要がある。今回の炎上を支える「一次情報」は、ほぼ存在しない。公式な講演映像や完全なスライドは未公開のままであり、拡散している情報の多くはXへの投稿、まとめブログ、YouTubeのリアクション動画が源泉だ。
特に問題とされているのが、「BelairがFF7の白人キャラやセクシーな女性キャラに批判的な発言をした」という趣旨の投稿が大きく広まった点だ。これに対して「本当にそう言ったのか?」と検証する動画も複数アップされており、最も過激なバージョンの発言が伝聞・脚色による”盛り”である可能性が指摘されている。
比較的落ち着いたソースによると、講演の実際の主旨は「業界における企業の弱腰(corporate cowardice)」や組織構造への批判であり、「白人キャラを個別に叩いた」という解釈とはかなり異なる内容だったとも伝えられている。
Xでの批判的な反応の真偽を検証するYouTube動画も公開されており、情報の精査が進んでいる状況だ。
整理:今回の件で確認できていること/できていないこと

- 【確認済み】Belair氏がGamescom 2026に登壇・講演したこと
- 【確認済み】スライドにFF7のキャラクターが引用されていたこと(Mistik Studiosのシェアによる)
- 【確認済み】講演が業界の企業体質・多様性問題を批判する内容であったこと
- 【未確認】「白人キャラやセクシーなキャラを批判した」という具体的発言の真偽
- 【未確認】講演の完全な文脈・映像(現時点で未公開)
情報が断片的なまま拡散したことで、実際の講演内容よりも過激な解釈が先行した面は否定できない。今後、講演の完全な記録が公開されれば、評価が変わる可能性もある。
「ban this sick filth(こんなひどいものは禁止しろ)」——Belair氏のスライドに記されていたとされる言葉。ただし、この文言が何を指していたのかは講演の完全な文脈なしには判断できない。
【編集部メモ】SBIをめぐる論争は2024年から繰り返されており、今回の騒動は「情報の信頼性」という問題を改めて浮き彫りにした。完全な講演映像が公開されない限り、断定的な評価を下すのは危険だ。日本市場では、FF7が引き合いに出された点が特に注目を集めており、スクウェア・エニックスの出方にも関心が集まっている。業界のDEI議論は沈静化するどころか、形を変えて続いている——それが2026年の現実だ。

