『Mixtape』とはどんなゲームか――基本情報
『Mixtape』は2026年5月7日にPC(Steam)およびPS5・Xbox Series X|S・Nintendo Switchなど主要コンソール向けに発売されたアドベンチャーゲームだ。開発はBeethoven & Dinosaur、パブリッシャーはAnnapurna Interactive。ジャンルは「ノスタルジア系カミング・オブ・エイジ(青春成長)アドベンチャー」と紹介されており、1990年代を舞台に、高校最後の夜を過ごす3人の10代の若者の物語を追う作品となっている。
サウンドトラックにはThe Smashing Pumpkins、Joy Division、The Cureなど誰もが知る著名アーティストの楽曲がライセンス使用されており、その豪華さは”インディーゲーム”という肩書きとは一線を画している。。
IGNが30年で数本しか出していない「10点満点」を付与

ゲームメディア最大手のひとつ、IGNが本作に対して満点となる10/10のスコアを付けたことが今回の騒動の発端だ。IGNはオンライン上で「なんでも7点をつけるメディア」と揶揄されるほどスコアのレンジが狭いことで知られており、30年以上の歴史の中で満点レビューを出したタイトルは一握りとされている。それほど貴重な10/10を、発売直後から賛否が割れていた本作が受け取ったことで、ゲームコミュニティに大きな波紋が広がった。
IGNのレビュアーSimon Cardyは「素晴らしい音楽」と「感情的なストーリーテリング」を絶賛。「プレイヤーに選択肢は与えられていないが、完成されたキャラクターたちの悪ふざけや痛みを、良い面も悪い面もひっくるめて体験することができる」と評した。また、「フェイルステートやハイスコアを狙わせる設計ではなく、その瞬間に存在し楽しむことを優先している」と述べ、本作をゲームとしてではなく没入型の感情体験として位置づけている。
「ゲームが自動で進む」「ゲームプレイが薄すぎる」と批判噴出

こうしたIGNの評価に対し、実際にプレイしたユーザーからは厳しい声が相次いだ。YouTube・X(旧Twitter)を中心に「ゲームが文字通り勝手に進む」「コントローラー入力なしで完了できるシーンがある」といった指摘が広まり、「インタラクティブな映画を受動的に見ているだけ」という批判が多く見られた。
SNSではゲームプレイの薄さに加え、特定の描写や演出への違和感、相対的に短いゲームボリュームなども俎上に上がった。あるユーザーは次のように痛烈に批判している。
「Mixtapeに10点をつける人は、ホールデン・コールフィールドを深いと思っているタイプ。これは史上最も気取った、ミレニアル世代向けのゴミだ」
また、ゲームメディアのスコアが業界全体に与える影響を懸念する声もあった。「ゲームプレイがほとんどない映画ゲームが10点を取り、本当に楽しいゲームプレイを持つ作品が低い点を取るのは、開発者・企業・パブリッシャーに誤ったメッセージを送ることになる」という意見も広く共感を集めた。
「インディーの仮面をかぶった業界の植え付け作品」疑惑

発売前から本作には別の批判も向けられていた。「インディーゲーム」を標榜しながらも、その実態は大手資本と業界構造に支えられた”インダストリープラント(業界の植え付け作品)”ではないかという疑念だ。
具体的には以下のような点が指摘されている。
- パブリッシャーであるAnnapurna Interactiveの背景に、世界有数の資産家の娘が関与しているとされること
- 政府資金の援助を受けているとされること
- 「インディー」ながら主要アーティストの楽曲を大量にライセンス取得していること(多額の予算が必要)
- インフルエンサーに豪華なプロモーションパッケージが発売前に送られていたこと
- 大手メディアで軒並み高評価が並んでいること
「世界5位の富豪の娘がパブリッシュ、政府資金あり、インディーなのに大手アーティストのフル楽曲ライセンス、パーフェクトスコア、コンテンツクリエイターへの高額ギフトセット——Mixtapeは業界の植え付け作品だ、絶対に」
こうした疑惑に対しAnnapurna Interactive側からの公式な反論は現時点では確認されていない。
IGNのレビュー偏向論争――DEIゲームへの高評価、美少女ゲームへの低評価

今回の騒動が特に大きな反響を呼んでいる背景には、IGNのレビューに対する長年の不信感がある。ゲームコミュニティでは以前から「IGNはDEI(多様性・公平性・包摂性)やポリコレ的なテーマを持つ作品に高評価を与え、逆に女性キャラクターが活躍する日本産ゲームや美少女ゲームには低い点数をつける傾向がある」という見方が根強く存在する。
もちろんこれはすべてのレビューに当てはまるわけではなく、個々のレビュアーの主観による部分も大きい。一方で、こうした認識がコミュニティ内で広まっている背景には、実際にいくつかの具体的なレビュースコアが比較・拡散されてきた経緯があり、一概に「根拠のない感情論」とも言い切れない状況だ。今回の『Mixtape』への10点満点が、この議論に新たな燃料を投じた形になっている。
似たような構図の事例として、『Slay the Spire 2』がアニタ・サーキシアン氏のコンサルタント参加を理由にレビュー爆撃を受けた件も記憶に新しい。ゲームの内容そのものとは別次元の「誰がどう評価しているか」という政治的・文化的な文脈が、ゲームの評価を大きく左右する時代になっているようだ。
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ゲームジャーナリズムへの信頼はどこへ

今回の一連の騒動は、単に『Mixtape』というゲームへの評価の問題にとどまらない。ゲームメディアとプレイヤー・視聴者の間に広がる「信頼の溝」をあらためて浮き彫りにした出来事とも言えるだろう。
かつてはゲームメディアのレビュースコアが購買判断の大きな指針になっていたが、現在はSteamのユーザーレビュー、YouTubeの実況動画、SNSでのリアルタイムな口コミなど、プレイヤーが直接評価を発信・参照できる手段が豊富にある。その結果、大手メディアのスコアが実際のプレイ感覚と大きくかけ離れていると感じたとき、読者の反発はかつてより大きく・速くなる構造ができあがっている。
『Mixtape』自体はSteamで購入可能で、ゲームの内容を自分の目で確かめたいユーザーは実際にプレイして判断するのが一番だろう。メディアの評価と自分の感覚のどちらが正しかったかを、プレイヤー自身が体験できる時代でもある。IGNのレビューとコミュニティの反応のどちらを信じるかは、最終的には読者ひとりひとりが判断することになりそうだ。

