何が起きているのか――「トピずれのレビュー」が大量発生

ローグライクデッキ構築ゲームの続編として大きな期待を集めている『Slay the Spire 2』(開発元:Mega Crit、PC/Steam向け早期アクセス配信中)が、ゲーム内容とは異なる文脈で再び話題になっている。2026年5月6日以降、Steamユーザーレビューに「トピずれのレビュー」が大量に投稿され、Valveはその期間のレビューをスコア計算から除外する措置を取った。
除外されたレビュー群に共通していたのは、フェミニズム批評家として知られる「Anita Sarkeesian(アニタ・サーキシアン)」氏の名前への言及だ。同氏が本作のコンサルタントとしてクレジットに記載されていることが一部ユーザー間で広まり、ゲームそのものへの評価とは切り離された形で批判的なレビューが殺到したようだ。
Steamの「トピずれレビュー除外」システムとは

Steamでは2019年より、「将来のゲーム購入者の満足度とは無関係な話題に焦点を当てたレビュー」をゲームスコアから除外する仕組みが導入されている。Valveはこれを「トピずれのレビュー荒らし」と定義し、短期間に大量発生した場合は調査チームが介入、該当期間のレビューをスコア算出から切り離すかたちで対処する。
今回もこのシステムが機能した格好で、5月6日以降のレビューがスコアから除外された。ただし、本稿執筆時点での「過去30日間の最近のレビュー」ステータスは「やや不評」と報告されており(出典:AUTOMATON)、早期アクセス開始からのレビュー推移は依然として安定していない状況だ。
アニタ・サーキシアン氏とはどんな人物か

アニタ・サーキシアン氏は、フェミニズムの観点からメディア・ゲームを批評する活動で知られる人物だ。2012年にゲーム批評シリーズ「Tropes vs. Women in Video Games」のKickstarterキャンペーンを立ち上げ、その後2013年から2017年にかけてYouTubeで動画を公開。『ゼルダの伝説』や『スーパーマリオ』シリーズをはじめとする著名ゲームにおける女性キャラクターの描かれ方を、フェミニズムの観点から批評的に分析した。
同シリーズは学術的評価を受ける一方で、ゲームコミュニティの一部から強烈な反発を招いた。批判はゲームの内容やフレームに対するものに留まらず、アニタ氏個人へのハラスメントや脅迫にまで発展した。この騒動は後にGamerGateと呼ばれる大規模な論争へと接続し、ゲーム業界における「ゲームの多様性・表現」をめぐる議論の象徴的な出来事の一つとして記憶されている。
その後アニタ氏はコンサルタントとしても活動しており、公式サイトによれば開発中のゲームのアートや脚本・ゲームプレイを検討し、ジェンダー・人種・セクシュアリティなどの表象に関して開発者へ詳細なレポートを提供するという。Devolver Digital発売の『Sludge Life』(2021年)やマイクロソフト発売の『Psychonauts 2』(2021年)などのタイトルでコンサルタントを担当したことが確認されている。
『Slay the Spire 2』でのコンサルタント参加が判明した経緯

今回の騒動のきっかけは、『Slay the Spire 2』のゲームクレジットにアニタ氏の名前が記載されていたことだ。同氏の公式サイトにも、開発元Mega Critがクライアントとして掲載されている。アニタ氏はDavid Von Derau氏、Tony Moore氏とともにコンサルティングを担当したとされている。
この情報がSNSなどで拡散されると、アニタ氏の過去の活動に批判的な立場のユーザーを中心に、Steamレビューへの否定的な投稿が急増。「ゲームの内容ではなくコンサルタントの存在が気に入らない」という旨のレビューが大量に流入し、これがValveに「トピずれのレビュー爆撃」と判断される事態となった。
一方で、「ゲームの購買意欲に影響しうる懸念を伝えることはレビューの正当な用途では」「コンサルタントの起用は開発の透明性の問題だ」といった反論も一部で見られ、「何がトピずれにあたるか」という議論も起きているようだ。今回のValveの判断に賛否両論が生じているのも、こうした文脈があるためだといえる。
ゲーム自体の現状と今後

『Slay the Spire 2』は2026年3月6日にSteamにて早期アクセス配信を開始。前作『Slay the Spire』は2019年の正式リリース以来、Steam上で「圧倒的に好評」を長期維持し続ける人気タイトルだ。続編も当初は高評価スタートを切ったが、アップデートのバランス調整に対して主に中国語ユーザーから多くの不満レビューが集まる流れが続いていた。中国在住ユーザーはインターネット規制の影響でSteamフォーラムやDiscordへのアクセスが困難なため、意見表明の場としてSteamレビューに頼らざるを得ないという事情もあったとされている。
そうした背景の中で今回のコンサルタント問題が重なり、早期アクセス期間中のレビュー状況はさらに複雑な様相を呈している。Mega Critは現在も開発・アップデートを継続しており、今後の正式リリースに向けたコンテンツ追加や調整が予定されているものと思われる。引き続きレビュースコアの推移や、開発サイドからの公式コメントが注目されるところだ。
なお、今回の件はゲームの完成度や面白さとは直接関係のない問題であることも付記しておきたい。コンサルタントの存在がゲームのどの部分にどのように影響しているのかは現時点では不明であり、ゲームそのものへの評価は実際にプレイして判断することを推奨したい。
『Slay the Spire 2』はPC(Steam)にて早期アクセス配信中。価格は2,570円(税込)。

