2025年5月7日に発売されたナラティブアドベンチャーゲーム『Mixtape』が、批評家からの絶賛とプレイヤーからの猛反発という異例の二極化評価を巻き起こしている。さらに5月13日にはPlayStation UKの公式Xアカウントがゲーム内の高校生キスシーンを宣伝素材として使用したことで、論争はさらなる過熱をみせているようだ。
『Mixtape』とはどんなゲームか

『Mixtape』は、前作『The Artful Escape』で知られる開発スタジオBeethoven & Dinosaurが手がけ、Annapurna Interactiveがパブリッシャーを務めるナラティブアドベンチャーだ。1980年代の青春映画にインスパイアされた本作は、高校最後の夜を過ごす3人の友人たちの物語を中心に据えている。The Smashing Pumpkins、The Cure、Portisheadなど豪華アーティストのライセンス楽曲を軸に、スケートボードや落ち葉かき、石の水切りといった多彩なミニゲームを通じて思い出を追体験する構成になっている。
価格は$19.99(約3,000円)、クリアまでの所要時間は約3時間。対応プラットフォームはPC(Steam)、PS5、Xboxで、Xbox Game Passにも対応している。
批評家が絶賛——Metacritic95点の衝撃

発売直後、ゲームメディア各社は軒並み高評価を付けた。IGN、DualShockers、Insider GamingはいずれもXbox版に10/10の満点を授与。GameSpotとNintendo Lifeも9/10を付けており、MetacriticのXbox版批評家スコアは95を記録した。ゲームジャーナリストのGene Park氏は「残念ながら今年のGOTY候補になるだろう」と皮肉交じりにコメントしており、その言葉がすでに「嵐の前の静けさ」を匂わせていた。
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「放置でクリアできる」——プレイヤーの怒りが爆発

最初の火種となったのは、発売翌日の5月8日にXユーザーのChristinaTasty氏が投稿した約3分間の動画だ。彼女はゲーム中の走るシーンでコントローラーに一切触れなかったにもかかわらず、キャラクターが自動的に走り続けてシーンが完了してしまう様子を公開。「このゲームはゲームでいることを拒否している。映画になりたがっている」というコメントとともに投稿されたこの動画は、2日間で1,400万再生・6.8万いいねを記録した。
翌5月9日にはXユーザーのMichaelDoesLife氏も、ショッピングカートで警察から逃走するシーンでコントローラーを放置しても自動クリアできると示す動画を公開し「文字通り勝手に進む。絶対に買うな」と断言。5.5万いいねを獲得した。さらに配信者のPaymoneyWubby氏は配信中にコントローラーを置いてスナックを食べながら「一度もクラッシュしなかった」実績トロフィーを取得してみせた。
5月11日にはRedditの/r/videogamesにボタンのないコントローラー画像が「Mixtape専用コントローラー」として投稿され4,300超のupvoteを獲得するなど、ミームとしても拡散。批評家スコアが95点を誇る一方、MetacriticのユーザースコアはXbox版で6.1まで落ち込んでいる。
PlayStation UK公式がキスシーンを宣伝——炎上に油を注ぐ
そして5月13日、PlayStation UKの公式Xアカウント(@PlayStationUK)が「Locking in for the Plat. #Mixtape」(プラチナトロフィー取るぞ)というキャプションとともに投稿を行った。選ばれたサムネイルが、矯正器具をつけた高校生2人の舌が絡み合うキスシーンだった。開発チームが「Ren & Stimpy的な生々しさを狙った」と語るシーンだが、公式アカウントが炎上の渦中にあえてこの画を選んだことで、批判の声はさらに広がりをみせた。
「ゲームにゲームプレイは必要か?」——続く議論

今回の騒動は、ゲーム業界で繰り返し浮上する根本的な問いを再び浮き彫りにしている。擁護派は「ナラティブゲームに従来型のゲームプレイを求めるのは的外れ」「インタラクティブ性は体験そのものにある」「ビジュアルノベルもゲームとして認められている」と主張する。一方、批判派は「全クリ3時間のうち30分以上が操作不要」「IGNの満点評価はゲームプレイの質を適切に反映していない」と指摘する。さらにAnnapurna Interactiveが億万長者の娘・Megan Ellison氏が設立した企業であることを引き合いに、インディーを名乗ることへの疑問も呈されている。
なお、Xbox公式も5月11日に「自分が好きじゃないゲームだからといって、それが悪いゲームということにはならない」と投稿(200万表示超)し、コメント欄がMixtapeへの批判で溢れるという一幕もあった。ゲームメディアの信頼性、プラットフォームの宣伝判断、そして「ゲームとは何か」という定義をめぐる議論は、しばらく続きそうだ。

