ポケモンを野生生物のように描いた非公式YouTubeチャンネル「PokéNational」が、Nintendo of America(米任天堂)からの著作権侵害申し立てを受け、近く削除されることが明らかになった。クリエイターのElious氏が4月26日に公開した動画にて自ら経緯を説明しており、3年間にわたる活動と累計400万回超の再生回数が幕を閉じようとしている。
「ナショナルジオグラフィック風」ポケモン動画で人気を博したチャンネル
「PokéNational」は2023年頃から運営されている非公式チャンネルだ。自然ドキュメンタリーの代名詞である「ナショナルジオグラフィック」をオマージュしたコンセプトのもと、ポケモンたちを野生に棲む生き物として描いた3DCGアニメーションを投稿してきた。記事執筆時点のチャンネル登録者数は9万人以上、累計再生回数は400万回を超えており、独自の世界観で高い人気を集めていたようだ。
Elious氏は4月26日、「I have 7 days.」というタイトルの実写動画を個人チャンネルに投稿。複数の動画に対してNintendo of Americaから著作権侵害の申し立てを複数回受け、YouTubeの「3ストライク制度」の上限に達したことを明かした。同制度では90日以内に3回の警告を受けるとチャンネルが削除される仕組みになっており、現時点で「PokéNational」のチャンネル自体は残存しているものの、動画コンテンツはすでにすべて消えている状態だという。
クリエイター本人が語る「申し立ては正当」「しかし自分だけなのか」という複雑な心境
Elious氏は動画の中で、約10万人規模の登録者数と3年間で積み上げてきたアニメーションがすべて失われることへの喪失感を率直に吐露している。一方で、Nintendo of Americaによる今回の申し立てについては「すべて正当に見える」と述べており、抗うことができないと説明しているとのことだ。
氏は、動画内でのポケモンのキャラクターや画像の使用については「おそらく著作物に該当する」と認めつつも、使用しているのはキャラクターの鳴き声3秒程度にとどまる部分もあり、それらはフェアユース(公正利用)の範囲内と考えているとも語っている。また、ゲームの視覚的要素を使用している他の多くのポケモン系YouTuberがチャンネル削除の対象となっていないことも指摘しており、「なぜ自分のチャンネルだけが削除されるのか」という疑問を呈しているという。
さらに、今回の申し立てによって3ストライクを超えた状態では動画ファイルを保存することも困難であり、3年間の制作物を今後ポートフォリオとして活用できなくなる点も大きな痛手だと述べている。同氏はこのチャンネルを通じてアニメーションスキルを対外的に示し、インターンシップや仕事の機会を得てきたという背景があるだけに、その損失は小さくないようだ。
Patreon開設が”引き金”になった可能性——利用規約との兼ね合い
今回の削除申し立ての背景として、注目されているのがPatreonの開設だ。Elious氏は今年に入ってからクラウドファンディングプラットフォームPatreonにアカウントを開設し、支援者に向けて今後のエピソード制作の裏側を公開しようとしていたとみられる。
ポケモン公式サイトの利用規約では、二次コンテンツについては個人的な利用に限って許諾されている。ポケモン関連の著作物を利用した動画を展開しながら、Patreonを通じた直接的な支援金の受け取りを目指したことが、チャンネルがマークされる契機になった可能性があると指摘されている。チャンネルへの申し立てのタイミングとPatreon開設のタイミングが近接していたことから、こうした見方が広がっているようだ。
任天堂・ポケモンの著作権対応と二次創作を巡るグレーゾーン
任天堂はゲーム映像・スクリーンショットを利用した動画投稿について、一定の条件のもとで認めるガイドラインを設けている。YouTubeパートナープログラムやニコニコ動画のクリエイター奨励プログラムなど、個別に指定された収益化システムについては許諾されている一方で、その範囲を超えた収益化については従来から厳しい姿勢が示されてきた。
『ポケモン』シリーズは任天堂のほか、株式会社ポケモン、株式会社クリーチャーズ、株式会社ゲームフリークをはじめとする複数の権利元が関与しており、利用規約の範囲内であれば二次創作が黙認される形となっている。今回の「PokéNational」のケースは、3年間にわたって存続してきたチャンネルが、Patreonによる直接収益化を試みた時点で状況が変化したともとれる。ゲーム系コンテンツクリエイターの間では、今回の件が「収益化の境界線」を改めて示す事例として受け止められているようだ。
コミュニティの反応——支持と惜しむ声、制度への疑問も
Elious氏の告知動画はファンやクリエイターの間で広く共有され、「素晴らしいコンテンツが失われるのは残念だ」「3年間の努力が消えてしまうのは辛い」といった惜しむ声が多く上がっているという。一方で、「著作権者の判断は理解できる」「利用規約を超えた収益化を試みた以上、やむを得ない」といった意見も見られるようだ。
また、YouTubeの3ストライク制度そのものについても、「削除前にクリエイターが制作物を保存できる猶予がないのは問題ではないか」という声が上がっている。Elious氏自身も動画の保存が困難な現状を明かしており、制度設計への疑問を呈する声も一定数存在するようだ。
現状と今後について
記事執筆時点(2026年4月30日)において、「PokéNational」チャンネルは削除保留中の状態にある。動画コンテンツはすでに非公開となっており、Elious氏がチャンネルの存続に向けて取れる手段は限られているとみられる。現時点でNintendo of Americaや株式会社ポケモンから本件に関する公式のコメントや声明は出ていない。
今回の件は、ファンによるゲーム二次創作コンテンツと知的財産権の問題を改めて浮き彫りにしたといえる。非公式コンテンツを制作するクリエイターにとっては、収益化の方法や利用規約の確認が今まで以上に重要になってくるだろう。

