2026年4月末にサービスが始まった中国発のオープンワールドソーシャルゲーム『NTE(Neverness to Everness)』が、ゲームの出来栄えだけでなく、「なぜ日本はこういうゲームを作れないのか」という議論のきっかけとしてSNS上で広く話題になっている。
「作り込みが尋常ではない」──ゲーム開発者が驚きをXに投稿
発端のひとつは、ゲームエンジニアとして知られるalwei氏(@aizen76)がXに投稿した一言だ。「日本のゲーム業界人の方でNTEを遊んでいる方であれば理解できると思いますが、このゲームの作り込みは尋常でありません」と述べ、ヘテロシティの高所からPC版・iOS版を比較撮影した画像を添付。どちらでもストレスなく遊べるクオリティを「どれだけ恐ろしい事かわかると思います」と表現した。
この投稿を受けてユーザーの@K2dBNAbpnJKFg6mは「素朴な疑問だけど、なぜこのようなゲームを日本は作らないんだろう。なにもかも先を越されて日本の業界の人は悔しくないのかなあ。本来アニメやゲームの国である日本が作るべきゲームだった」とコメント。この言葉がさらに拡散し、議論の火種となった。
「作りたくても作れない」──開発者側の本音と構造的な問題
前述のalwei氏は続くスレッドでより踏み込んだ見解を披露している。「作りたくても作れないというのが真実です。みんな作れるのなら作りたいですよ。日本からアニメ調の面白いゲームがもっと出るべきでした」と述べており、意欲の問題というよりも、体制・予算・市場構造が壁になっているという認識を示している。
SNS上では複数の視点から原因分析が行われた。主な意見をまとめると以下のようになる。
- 市場構造の違い:日本はコンシューマー(CS)ゲームが主流で、アニメ調の大規模オンラインゲームはビジネスとして組み立てにくい。カプコンやスクウェア・エニックスはフォトリアル路線で実績を重ねており、あえてアニメ調OWに転換するインセンティブが乏しいとの声がある
- 開発費の桁が違う:「最低100億なければスタートラインにすら立てない世界」という指摘もあり、中国のような国規模の支援がなければ到底参入できないとも言われている
- 中国側の歴史的背景:違法DLが横行していた時代に「オフライン売り切りは成立しない」という前提があったため、大規模MMOを基礎として発展させてきた経緯があり、気合・情熱・ノウハウの蓄積が根本的に異なるとの分析も出ている
- 企画が通らない:「FGOとブレワイを同時に作るような企画は会議で止まる」「どういう理由でどのくらい売れるのか説明できない」という、日本企業の意思決定プロセスの問題を指摘する意見も目立った
- 10年以上前のソシャゲシフトのツケ:スマートフォンソシャゲに人材と予算が集中した結果、この規模のゲームを作れる体制が整っていないという見方も根強い
「日本が作らない」ではなく「日本人がアニメ調を好まない」という反論も
一方で、前提そのものを疑う声も少なくない。イラストレーター・ノザキハコネ氏は「カプコンやスクエニはなんやかんや当てるゲームを出すがグラフィックはフォトリアル路線だし、ブループロトコルは死んだから、日本人がべつに言うほどアニメ調を好きではないのが答えでは」と指摘。市場が求めていないから作られないという、シンプルな需給の問題として捉える向きもある。
これに対してはすぐに反論も飛んだ。「テイルズは売れているし、そもそも中華のアニメ調ゲームが日本でも売れている時点でその理論は破綻している」「最近のゼルダだってアニメ調でしょ」という声も多く、”アニメ調=売れない”という単純な図式には疑問符がついている状況だ。
また、「逆になぜ中国は中国の街を作らないのか」という逆張りの疑問も話題になった。NTEの舞台は近未来的な架空都市であり、日本のアニメやゲームを参照していると見られる要素も多い。このあたりの相互影響については、また別の議論になりそうだ。
「おにぎリヴァイアサン」が象徴する作り込みへの熱量
議論の中で少し異彩を放ったのが、ゲーム内のおにぎりの画像を貼り付けて「そういうことは、作り込まれたこのおにぎりを見てから言ってくれ」と投稿したユーザーの存在だ。細部に至るまでこだわられたビジュアルが、作り込みの象徴として話題になった。
また、「ブループロトコルって名前は知ってるけど駄目だったんですか?」という投稿も拡散し、2023年にサービス開始し2024年末にサービス終了したバンダイナムコ発のアニメ調OWゲーム『ブループロトコル』が改めて言及される場面も多かった。同作が振るわなかった理由はゲーム性の問題とする意見がある一方で、「アニメ調だから失敗した」とは一概に言えないという見方も根強い。
レッドオーシャン化という現実
議論が盛り上がる一方で、冷静な分析も出ている。「NTEのセルランでの不振を見るに、このジャンルは既にレッドオーシャンだと思う」という意見もあり、原神・崩壊:スターレイルなどが確立したフォーマットに今から参入しても二番煎じ感が出てしまうという指摘も見られる。
「日本は限られたリソースの中でやりくりするのが上手いのであって、無限にデカくなるプロジェクトは苦手」という分析は、日本のゲーム開発文化そのものを突いているようで、短くも本質的な一言として多くのユーザーに共感された模様だ。
日本のゲーム業界が「アニメとゲームの国」という看板を守り続けるためにどうあるべきか──NTEを巡る議論は、単なる一タイトルの評価を超えて、業界構造や市場戦略にまで波及している。答えは簡単には出ないが、これだけ多くの人が真剣に考えている事実は、業界にとって決して無視できないシグナルといえるだろう。

