きっかけはVtuberゲーム制作者のひとこと
2026年5月3日、ゲーム制作Vtuberの園児ニア(@enzi__nia)さんが投稿したXのポストが大きな反響を呼んでいる。作業通話中にパブリッシャーとの収益分配の話になり、そこに漫画家も参加していたことで、ゲームと出版それぞれの業界構造の「違い」が浮き彫りになったというエピソードだ。
私「だいたい収益は7:3で分配ですね~」
漫画家「え!?3割も貰えるんですか!?」
私「いや、3割はパブリッシャーの方です、7割パブリッシャーは悪徳ですよ」
漫画家「えええ!?漫画は9割出版社ですよ…」
私・漫画家「…(絶句)」
ゲーム業界では制作者側が7割を受け取れる契約がスタンダードとされており、それ以下はむしろ「悪徳」と認識されているという。一方、出版業界では漫画家への還元率は印税として1割前後が一般的とされており、同じコンテンツ制作でも業界によってここまで構造が異なることが多くの人の驚きを呼んだ。
出版業界の「9割」はどこへ行くのか——コスト構造を整理する
この話題に対し、出版業界に詳しいユーザーからは「おかしくない」とフォローする声も多く寄せられた。書籍の売上は著者に渡るまでに多くの関係者を経由する仕組みになっているためだ。
@rD4SL0USNC96196さんによると、書籍本体の売り上げの取り分は大まかに「出版社 約4割(編集費・製本代・返本対応・販促)/取次 約3割(受注対応・流通)/書店 約2割(販売・販促)/著者 約1割」という構成になっているとのことだ。
さらに@nyonyoriaさんは、出版社側の事情をこう説明している。
出版社は編集、印刷、販促、在庫管理全部自腹。で流通してもらうために取次に70%ほどで卸す。でも買い切りではないので出荷額=売上ではなく返品の管理費もコストとして乗っかる。これで漫画家が何割もよこせというならかわりにコストも負担してもらわないと出版社潰れるし新人に投資できない。
単行本の印刷費だけでも1冊あたり500〜600万円ほどかかることがあり、全部売り切れても印刷費を引くと約6割しか戻らず、さらに人件費などを差し引くと出版社の取り分が赤字になるケースもあると@kaitan56666さんも言及している。
また@buri_kinoさんは「本はそもそも売れなくても著者は刷った数だけ貰えるのでぜんぜん違う」とも補足しており、リスク負担の違いも考慮すべき点として挙げている。
ゲーム業界も一律ではない——契約内容や流通形態で大きく変わる
ゲーム側の「7:3」という分配も、あくまで一例に過ぎないようだ。元のポストでも触れられているように、パブリッシャーが開発費を一部負担しているかどうか、Switch移植などのオプション対応が含まれるかどうかによって契約内容は大きく変わってくる。「完成後の分配のみで7割パブリッシャー取りは悪徳」という発言も、あくまでそうした前提条件があってのものだ。
さらに流通形態によっても取り分は変化する。DL販売であればパッケージ製造や物流コストが不要になるため、開発者の手取りは増えやすいとされる。Google PlayやApp Storeでは年間収益が1.5億円以下の場合、プラットフォーム手数料は15%に抑えられているという情報も寄せられており、条件次第では制作者に有利な環境も整ってきているようだ。
電子書籍の普及で、出版の構造は変わるのか
今回の話題で特に注目を集めたのが、電子書籍における還元率の問題だ。ある投稿によれば、電子書籍における著者への還元率は15%程度にとどまるケースがあるという。印刷・流通コストが存在しないデジタル販売において、なぜここまで低いのかという疑問は、多くのユーザーが共感を示した点でもある。
「紙の時代のコスト構造を20世紀からそのまま引き継いでしまっている」という声や、「電子書籍が売上の半分を超えてくる時代に、このバランスをどう見直すべきか」という意見も散見されており、業界全体の構造変革に対する期待感もにじむ。一方で、出版社が株式市場に上場していないことで株主圧力を受けずに済み、売れない作品を抱えられるという「表現の自由」的な側面も指摘されており、単純に著者への還元率を上げるだけでは済まない複雑さもある。
「チームプレイ」として捉え直す視点も
この議論に対し、書籍編集者でもある@M_Kamikuroさんは「全国出版を著者、デザイナー、出版社、取次、運送、書店といった”みんな”で実現させるチームプレイと考えれば、著者印税6〜10%という数字はおかしなことではない」という考えを示し、一定の共感を集めている。それぞれの関係者に生活があり、それを支える構造として業界が成り立っているという見方だ。
漫画家・カメントツ氏が2017年に描いたルポ漫画も本スレッドで紹介されており、出版の収益構造をわかりやすく解説した内容として今なお参照されている。
ゲームと漫画という異なるコンテンツ産業の収益構造の違いが、クリエイター同士の何気ない会話から浮かび上がったこの一件。「どちらが正しい・間違い」という話ではなく、それぞれの産業の歴史的背景とコスト構造への理解を深めるきっかけとして、多くの人が関心を持ったようだ。

